PONTAkun’s blog

自分の生きてきた経験や思いを素直に書いてます

目立たなかった練習生 ~最終回~

こんばんわ!!

 

「目立たなかった練習生」も今回でいよいよ最終回となりました。

 

僕が人様のお役に立てた話をするはずがこんなに長くなってしまいましたね。

 

おそらく読者様は「どんだけ長いねん!!」、と突っ込まれたはずです(笑)

 

しかし今日で何とか締め括ります。

 

最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。

 

 

では最終回。

 

2か月後、遂にSくんのプロテストが決定したのです!!

 

僕はその報告を聞き、

 

僕「頑張れよ!まあ、いつも通りだ。お前なら受かるよ。」

 

そう声をかけました

 

プロテストの内容はと言うと、テスト当日にスパーリングを2ラウンド行います。

 

合格基準はボクサーとして強いか弱いだけが見られるものではなく、基本がどれだけ出来ているかを見られるテストです。

 

もちろん一定以上の強さは必要ですが、それに加え基本のジャブ、ワンツー、ガードなどの基本動作がしっかり出来ているかを審査員に見られます。

 

極端な話、合格最低ラインの強さであっても基本がしっかりしていれば受かりますし、物凄く強くても基本動作をやらずにブンブンとパンチを振り回せば落ちることがあるということです。

 

また、プロテストの大きなポイントは、テスト当日のスパーリングパートナーについてです。

 

テスト当日にテスト生どうしのスパーリングが行われるため、相手の組み合わせはその日に決まります。

 

つまりその日の運次第なのです。

 

運が良ければやり易くて弱い相手、運が悪ければやりにくくて強い相手。

こればっかりは本当に運です。

 

しかし、もしプロテストに受かりやすい練習生と受かりにくい練習生に分けたなら、基本練習ばかりしていたSくんは前者です。

 

だから僕は受かると思っていました。

 

テストまで2カ月間は相変わらず僕と基本練習の日々でした。

 

変わらない僕らの日々、ただトレーナーの見る目が少し変わったのか、Sくんをいろんな練習生とスパーリングさせるようになりました。

 

Sくんはいろんなパターンの相手と戦うことで、その2か月間はまた一段と強くなったと思いました。

 

そしてテスト前日、Sくんにかける僕の言葉は変わりませんでした。

 

僕「頑張れよ。いつも通りだ。難しいことはしなくていいから。」

 

S「はい。」

 

 

 

そしてプロテストを受験し、その結果報告が来ました。

 

結果は合格!!

 

その報告を聞き、

 

僕「おめでと!!やったな!!おまえ凄いじゃねえか!!」

 

Sくん少し嬉しそうな顔で、

 

Sくん「ありがとうございます。これからも宜しくお願います。」

 

僕「いやー、もう同じプロだし教えることないわ(笑)」

 

実際にプロになればトレーナーもしっかり面倒は見てくれるし、基礎のしっかりしているSくんはあと1年もすれば自分を追い抜くと思いました。

 

しかしSくんは、

 

Sくん「またデビュー戦のときもお願います。」

 

そう言ってくれるなら、

 

僕「おう、また頑張ろうな!」

 

Sくんに教えるという形でなくても何かしらの協力は出来るだろうと思い、また一緒に頑張る約束をしました。

 

しかし、この約束を果たせることはありませんでした。

 

僕の奥さんが体調を崩し急遽入院することになったのです。

 

それを仕事中に奥さんから電話で聞いた僕は、迷わずジムを辞めることを決意しました。

 

そしてその日の帰りにジムへ行き、辞める意思をすぐ伝えました。

 

訳を話すと会長やトレーナーは「いつでも帰ってこい」と言ってくれました。

 

そして、Sくんにもそのことを伝えるときが来ました。

 

Sくんは先に着替えて柔軟体操をしていました。

 

僕が辞めることは当然知りません。

 

僕に気が付いたSくんは、

 

Sくん「今日は着替え持ってきてないんですか?」

 

僕「お、おう・・・。」

 

どう言ったらいいのかわかりませんでした。

 

Sくんは少なくても懐いてくれていました。

 

その可愛がっていた後輩にためらってなかなか言えません。

 

だけど、言わないと・・・

 

僕「俺な、実は今日でジム辞めるんだわ。奥さんが急遽入院しちゃってな。ごめんな。」

 

このとき僕はSくんから目を逸らして言ってしまいました。

 

情けない男です。

 

しかし、Sくんは言いました。

 

Sくん「奥さんを大事にしてあげて下さい。いろいろとありがとうございました。」

 

Sくんは最後に優しい笑顔で笑っていました。

 

少し驚きましたが、

 

僕「こちらこそありがとな。お前と練習できて楽しかったわ!」

 

Sくん「プロテストに受かったのは先輩のおかげです。ありがとうございました。またいつかジムへ戻ってきてください。」

 

そういって見送ってくれました。

 

Sくんがプロになれたのは自分のおかげではない、そんなことは分かっています。

 

しかし、そう言ってくれることが嬉しかったです。

 

そして自分は人の役に立てたんだ、そう思えることができました。

 

自分のようなポンコツ人間が本当の意味で人の役に立てる機会はそんなにないと思います。

 

しかし、その貴重な機会に出会うことが出来ました。

 

そして本当に人の役に立てたとき、感謝を感じるのは自分なんだとも教えてもらいました。

 

Sくんに出会えたことでチャンスをもらえたのは自分なのかもしれません。

 

 

長い話にお付き合いいただいた方々ありがとうございました。