PONTAkun’s blog

自分の生きてきた経験や思いを素直に書いてます

おっちゃんの背中

僕がとある会社に入社したときの話です。

 

その会社はいつも朝のゴミ運びのからはじまりました。

 

当然ゴミ運びは若手の仕事だから毎朝行っていました。

 

ゴミの量が多いため、ゴミ置き場まで何回も往復しなければなりませんでした。

 

ある朝のことです。

 

おっちゃんがリフトに乗ってこっちに走ってきました。

 

リフトの爪におおきな籠をつけており、「ここにゴミいれや!運んだる!」と言ってくれました。

 

おっちゃんが誰かは分かりませんでしたが、「ありがとうございます!!」と言ってゴミを籠に放り込みました。

 

ゴミ置き場の往復がない分、その日は本当に楽でした。

 

その日はラッキーだった、そう思ったらその日から毎朝おっちゃんが来てくれるようになりました。

 

自分の仕事もあるだろうに悪いなと思い、僕は缶コーヒーを買っておっちゃんに渡しました

 

僕「いつもお忙しいのに本当にすいません」。

 

おっちゃん「ありがとうな。今回は有難くいただくけど、こういうことはやめてな。俺ら仲間やろ。仲間は助け合って当然や。」

 

このときおっちゃんに男気を感じるとともにかっこいいと思いました。

 

それにしてもこの人は何処の部署で何年くらい働いているのだろう?

 

気になったため、長年勤めている先輩にその人のことを聞きました。

 

名前がわからないため特徴と「後輩思いの熱いおっちゃん」伝えるとすぐにわかったらしく「あー〇〇さんね!」と答えた。

 

そして先輩からおっちゃんの過去を聞かせてもらいました。

 

おっちゃんはかれこれ勤続年数30年数年以上で、一度は定年を迎えて再雇用でシルバーとして働いている人でした。

 

若い頃は仕事が出来て、人望もあり係長までいったそうです。しかしおっちゃんは良くも悪くも素直な性格で一度社長と大喧嘩をして、役職はかなり降格したそうです。

 

それだけならまだしも、部署も変えられた上に倉庫管理に回されてしまいました。

 

誤解を招かいないためにも話しておきたいのですが、倉庫管理の仕事が悪いと言っている訳ではありません。

 

ただ、その会社の倉庫は会社から車で20分くらいの人気のないところにあり、従業員も誰一人としていませんでした。倉庫と言うよりはただの物置きです。

 

つまりおっちゃんを会社から追い出すために、クビにはできないからわざとそういう部署を作り一人ぼっちの倉庫に追いやったそうです。

 

係長として第一線で活躍していた人なら、普通は精神的苦痛に耐えられず辞めていくでしょう。

 

しかし、並みの精神ではないおっちゃんは何年も耐えたそうです。

 

来る日も来る日も一人で倉庫に行き、仕事なんてあってないようなものなのに頑張り続けたそうです

 

そして何年か経ったある日に転機が訪れたそうで、おっちゃんの元いた部署の人が辞めることになり、特殊な作業だから一から新人を雇うより、経験者のおっちゃんを呼び戻す方が遥かにコストがかからないということでおっちゃんを会社に呼び戻したそうです。

 

もちろん役職は上がることはなかったそうです。

 

そして定年まで働き現在に至るそうです。

 

そういった過去を聞き、僕自身はおっちゃんを凄い人であり、また強い人だと更に好きになりました。

 

そんな辛いことを乗り越えてきたから、僕たち若い衆にも優しく接することができるんだって。

 

部署が違うため仕事で関わることはありませんでしたが、毎朝会うたびに「おう!!おはよ!!今日も頑張ろうな!!」、と元気な声で言ってくれました。

 

僕はおっちゃんの笑顔が大好きでした。

 

しかし入社して5年経った頃、僕はいろいろなことが重なり会社を退職することになりました。

 

退職することは会社に伝えたものの、同僚やパートさんには言わないでほしいと会社側から口止めされました。

 

退職が決まり、昼休憩に一人現場でスマホをいじっていると誰かの足音が聞こえました。

 

普段誰も来ないのに誰だろう?

 

おっちゃんでした。

 

僕が辞めることをどこかから聞きつけ、わざわざ来てくれたのでした。

 

おっちゃん「つらかったんやな。ようここまで頑張ったな。」

 

その言葉を聞いた瞬間、自分は泣きそうになってしまいました。

 

僕「ありがとうございます。本当にお世話になりました。ゴミ出しをいつも助けてくれたことは忘れません。」

 

おっちゃん「俺ら仲間やんけ。次行っても頑張りや。ここの会社はもうあかん。若い子がみんな辞めてしまいおる。自分やったら次のとこで上手くやっていけるわ。応援してるで!!」

 

そういっておっちゃんは歩いて行きました。

 

その時の背中に物凄く男を感じたのを覚えています。

 

そして翌週、事件が起きました。

 

月に一度、会社で全体朝礼があるのですが、社長の綺麗ごとをみんなで聞く日なのです。

 

「社員みんなの幸せ」とか「仕事を通じて人間性の向上」とか「会社を好きになりましょう」とか、散々人をボロ雑巾にしておいて本当にもういいよって誰もが思っていました。

 

社長はいつものように壇上からマイクで綺麗ごとを並べていました。

 

社長の話が終わり朝礼解散かと思ったら、誰かが大きなこえで叫びました。

 

「社長!!若い子らみんなサービス残業してしんどい思いしてんのにこのままでいいんですか?あなた何にも思わないんですか!!」

 

みんな驚いた。

 

社長もこんなことは想定外だから、「私は嘘は言ってません」と一言だけ言い残し早歩きでその場を後にしました。

 

どうみても社長は逃げたようにしか見えなかったです。

 

そしておっちゃんの勇気をみんな称えました。

 

「あの人は男だ」

 

「あの人はやっぱり違う」

 

とかいろんな声を聴きました。

 

しかし、この行動は当然ながら社長の逆鱗にふれました。

 

そしておっちゃんの次回の契約更新は行われませんでした。。

 

事実上クビです。

 

そして、偶然にもおっちゃんと僕の退職日は同じになりました。。

 

クビになったという噂はすぐに会社中に広まりました。

 

人間は汚い。

 

あれだけ持ち上げていたおっちゃんを今度は

 

「あの人はバカだ」

 

「いい歳して限度を知らなさすぎる」

 

と罵り始めました。

 

まるで自分はそうならなくてよかったとでも言うのか?

 

一体誰のためを思って叫んでくれたんだよ。

 

悔しさで涙が出てきました。

 

退職日おっちゃんとお別れの挨拶をしました。

 

お互いに同じ日に会社を去る。

 

おっちゃん「俺も次んとこでバリバリやるで!!これからや!!」

 

凹んでる様子なんて微塵も見せませんでした。

 

僕「僕も〇〇さんに負けないように頑張ります」

 

おっちゃん「おう!その意気や!お互い頑張ろうぜ!!」

 

そう言っておっちゃんは僕の肩をポンポンと叩き、笑顔で去って行きました。

 

あれ以来おっちゃんには会ってない。

 

だけど、この汚い社会で数少ない侍に会えた気がしました。