PONTAkun’s blog

自分の生きてきた経験や思いを素直に書いてます

綺麗事は言えなかった(後編)

こんにちは!!


前回の後編です。


それではどうぞ!!




バレンタインデーが近づいてきてKさんは張り切っていました。


Kさんの趣味は編み物で、その腕はまさに天才。


周りのパートさんも絶賛するぐらいでした。


「あの人は変な人だけど、編み物は天才やわ。デパートとかで売れるレベルやであれは。」


そう言われていました。


実際にKさんは若い頃、編み物の展示会で賞をもらったり、洋服屋さんからウチに編み物をつくって卸してみないかとスカウトも受けたことがあるそうです。


Kさんは休憩中いつも編み物に没頭していて何かしら作っていました。


そして、バレンタインデーが近づいてきた頃、張り切って作っていたモノは部長への手編みセーター。


趣味ですから何を作るかは個人の自由だけど、社内で不倫行為の相手に向けて作るのは良いことだと思えませんでした。


そしてバレンタインデーの3日くらい前に手編みのセーターは完成したそうで、それを僕に見せてきました。


仕上がり具合は本当に凄いものでした。


確かに周りのパートさんが言うように売り物かと思うくらいです。


Kさん「あの人コレ渡したら毎日着るやろな。」


何かを想像しながら笑顔で語るKさん。


僕「いや、バレンタインデーに渡すのは駄目だろ。それ明らかに義理チョコとかの域を超えてるぞ。周りから誤解されるようなことするなって言ってるのわからんか?」


Kさんは都合悪いことに対していつも通り無視。


そしてバレンタインデーの前日。


Kさんはものすごい立派な包装をされたセーターを持ってきました。


聞けば包装だけ高島屋でやってもらったということです。


そしてそれをまた帰り際に僕へ渡してきました。


Kさん「頼むで!!渡しといてや!!」


僕「いやいや、渡すわけねぇだろ!!」


そして僕は係長へ相談しました。


係長は「またかアイツは・・・。もうほっとけ。」


呆れて何も言えませんでした。


僕はでっかい包装紙に包まれたセーターをそのまま放置して帰りました。


しかし、このほっとくと言うことが後々大きな問題を起こしてしまいました。




バレンタインデー当日。


出社してくるなりKさんは「もう!!!渡してないやん!!」


いつも通り怒るKさん。


僕はいつも通り過ぎて無視。


ほっとくことにしました。


Kさんは一人で誰かと話していました。


仕事中もずっと。


一人で笑顔になったり、機嫌が悪くなったりして僕は正直怖かったです。


そして、午前中の仕事が終わり昼休憩。




Kさんは包装されたセーターをもってどこかへ行きました。


僕はてっきり自分のロッカーにしまいに行ったのだ思いました。




しかし、そうではありませんでした。


ここからは聞いた話なのですが、Kさんは社内の食堂で、しかもみんながいる前で部長へ堂々と渡してしまったそうです。


そして、みんな驚いて食堂がざわついてしまった。


当然ながら部長は受け取りを拒否。


僕は何も知らずに昼休憩中も生産が遅れていたので現場で仕事をしていたのですが、Kさんが現場に戻って来たと思ったら「あいつ照れて受け取らなかったわ。」と笑顔で僕に言いました。


何があったのか分からない僕は意味不明でした。


ただ、直接渡しに行ったのかもしれないと嫌な予感はしました。


そして、昼休憩明けにカンカンに怒った係長が現場へ来ました。


係長はKさんがセーターを直接渡しに行ったことで上司達にパートの管理がなってないと激怒されたそうです。


係長は事務所にKさんを呼び出して怒鳴ったそうです。


子供のような大号泣をして戻ってくるKさん。


現場へ戻って来たはいいけど、号泣して仕事になりません。


周りのパートさんも困った顔をしていました。


これはもうダメだと思い、僕は事務所にいる係長のところへ行きハッキリと伝えました。


僕「すいませんが今日はKさんを自宅へ帰していただけませんか?号泣して仕事になりませんので。」


大きなタメ息をついて係長は「あいつ(Kさん)もう一回ここに呼んでくれん?」と言いました。


僕はKさんに事務所へ行くように伝えました。


しばらくしてまた現場へ戻ってくるKさん。


号泣はなぜか収まっていました。


何を言われたのかは分からないですが、泣き止んで速やかに業務に取り組み始めました。


後で係長から聞けば今すぐここで辞めるか、今すぐ泣き止んで現場で仕事するか選べといったそうです。


こっちとしは仕事さえしてくれれば何も言うことはないから、それからは特に何か言うことはありませんでした。


しかし、部長へ直接渡しに行ったという事実は会社中に広まってしまいました。


Kさんはその日を境に更に意味不明な行動や発言を言い出しました。


僕にいきなり「私の水筒の水飲んだやろ!!」とキレてきたり、ゴミ箱を漁りだしたと思ったら「私の携帯ゴミ箱に捨てたやろ!!」とキレてきたり、被害妄想が止められなくなっていました。


終いには荷物を誰かに物色されてると言いだし、Kさんは自分のリュックをガムテープでグルグル巻きにしていました。


もう誰も止められませんでした。


僕も最初は聞き流していたものの、あまりにも毎日しつこいので怒ってしまいました。


僕「いい加減にしろ!!俺がなんでそんなことするんだよ!!現実見ろよ!!」


キレてしまいました。


Kさんは少し驚いていました。


情け無いですが、仕事が忙しい僕には優しくする余裕はなかったんです。


そのときはKさんが統合失調症だって知らなかったけど、発言や行動のおかしさから明らかに精神的病を抱えてるのは僕だって分かっていました。


出来ることなら怒らず優しく接してあげたかったですが、僕はそんな出来た人間ではありません。


本音を言えばもう辞めてもらいたかったのです。


まだ職場でなければ優しく出来たかもしれません。


だけど職場である以上は仕事をしっかりしなければならないため、みんなピリピリもするし他人に構ってる暇などありません。


そんな中で被害妄想を聞いてる余裕があるはずもないのです。


もはや綺麗事を言えませんでした。


そして入社してから半年後、僕は正式に自分の配属先が決まりました。


僕はKさんのいる現場から離れることになりました。


係長も僕の教育が終わり、元いた現場へ戻ることになったため、その現場には新しいリーダーが来ることになりました。


お世話になったパートさん達には「いろんなことを教えていただき、ありがとうございました。」と伝えました。


しかし、Kさんには「次のリーダーは怖い人だから大人しくしとけよ。」と素直に思ったことを伝えました。


事実、次のリーダーは怖い人だと社内では通っていました。


今のままではKさんは三ヶ月持たないだろう思いました。


自分が新しい配属先に異動して1週間も経たないうち、Kさんは新しいリーダーに怒鳴り散らされていると聞きました。


ストレスからかKさんはある日「みんな包丁で刺し殺してやる!」と新しいリーダーに言ったそうで、その発言は速攻で総務部と人事部に伝えられました。


そして、その発言からKさんは危険人物と見なされ、精神科医に行くことを勧められ二週間の自宅療養を命じられました。


自宅療養は名目であって謹慎処分のようなものです。


それから二週間、Kさんは職場に来れなくなったはずでした。


しかし3日か4日経った頃、始業前に僕は現場で伝票整理をしていると「おはよう」と背中越しに女性の声が聞こえました。


振り向くとそこにいたのはKさん。


僕「あれ?もう来てもいいって言われたの?」


Kさん「もーう、あの人が早く来いっていうからさ」


と、笑顔で僕に言い自分の現場へ行きました。


当然ながらKさんは会社に来ていいはずはなく、自分の妄想で来ていました。


リーダーが何故勝手に会社へ来たのか問い詰めると意味不明なことを言っていたそうです。


そしてその行動が決めてとなりKさんは解雇となりました。


Kさんはお母さんと息子の三人暮らし。


後から聞いた話ではKさんの統合失調症はかなり重い症状で入院したと聞きました。



あのとき自分が変に話しかけてしまったからこうなったのかと思うと、誰とでも話すと言うことは罪なのかなと感じました。


みんなと仲良くすると言うのは確かに良いことの様に聞こえます。


しかし、綺麗事ではなくそれも時と場合によるんだと思いました。


あのとき話しかけなければ、Kさんとドライに接していればこんなことにはならなかったのかと思うと悪いことをしたなと思えてきます。